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水と食の清い関係

日本酒 -NIHONSYU- にほんしゅ

水とお酒の美味しい関係

酒造りと湧水の密接なリレーション

酒造りには、米・水・人の三つの要素が大事だと言われています。そのうちのお米は、山田錦や美山錦など普段私たちが食べるコシヒカリなどとは違う、酒造り専用のお米で、高い品質のものは「酒造好適米」と呼ばれます。現在では、物流も発達し、全国の産地から酒造好適米が各地の蔵元に届けられ、酒造りに使用されています。

また、日本酒はその80%が「水」で構成されています。このことから水の質がお酒の味を大きく左右することになります。富士山周辺の蔵元は当然のことながら、富士山の湧水を仕込み水に使い、きれいなお酒を醸しています。富士山の湧水は軟水と呼ばれるミネラル分の穏やかな水です。軟水を使ったお酒は一般に淡麗で、きれいな味わいとなる特徴があります。米をお酒に変える主役の「酵母」は硬水でよく働くものが多く、軟水を使用した酒造りは発酵がゆっくりと進み、その発酵の停滞を招かないように高い技術が必要とされます。

そこで、昭和60年代になって静岡県の蔵元の悲願として開発されたのが、静岡酵母。この酵母と静岡県の軟水は、特に吟醸酒を醸すうえで非常に相性がよく、バナナやマスカットなどを思わせるフルーティな香りと雑味のなさが静岡県の吟醸酒の地位を格段に押し上げました。以来、静岡県は「吟醸王国」のひとつとして全国に名を馳せることとなりました。

日本酒写真
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富士山のように清らかで優しいお酒を

旧芝川町、富士宮市上柚野にある蔵元富士錦酒造。眼前にそびえる雄大な富士山と清らかな水が流れるのどかな田園風景。酒造りに適したこの環境は、訪れるだけで心が洗われるような気分になります。毎年3月にはこの場所で「蔵開き」が開催され、多くの人が田んぼに腰をおろし、おいしいお酒を酌み交わしながらたくさんの笑顔が溢れる、そんな風景に出会うこともできます。

こちら柚野の里にある富士錦酒造が酒造りに使用している水はもちろん、日本一の山・富士山からやってくる地下水です。酒蔵の地下30m、三層の溶岩層を掘り抜いたところから富士山の水を採取しています。

富士錦酒造の清社長が「この水はどれくらいの年月をかけて富士山の中を通って来たのだろう?」。そう思って最新の測定方法で調べてもらった結果はなんと79年。水質は不純物が非常に少なく雑菌などもなくミネラル分が少ない軟水。浄水器にも活性炭が入っていますが、富士山の溶岩が何層にも重なって壮大な時間と大きさで山の地下に水甕を形成し、その水が蔵の地下にこんこんと美しい水を届けてくれます。ほぼ人間の一生と同じ年月をかけて湧き出す富士錦の仕込み水。その重みは水を口に含んだ時の清らかさに現れています。

この水が富士錦のお酒の個性である「軽くて飲みやすい、すっと入ってふくらみのある味わい」を実現しているのです。食事の邪魔にならず、逆に食事の味を引き立てる酒。そのあたりが富士錦の味の基本線ですが、それはこの水があるからこそ培われたものといえるでしょう。

例えば富士錦が得意とする純米酒。昭和46年に全国に先がけて純米酒を発売した富士錦酒造は、米と水だけでより美味しい酒を造るための試行錯誤を重ねてきました。独自の伝統技法を用いて醸造される純米酒は富士錦のなかでも一番人気でベストセラーの一本。富士山の水の性質を活かし、純米酒としてはさらりとした口当たりがあり、味と香りのバランスのよい富士錦らしい飲み口です。食事にもとても合いやすく冷やでも燗につけても美味しいオールマイティなお酒です。

そしてベルギーのモンドセレクションで今年4年連続最高金賞を受賞した大吟醸[金]。山田錦という酒米の王様を、芯の部分まで磨き上げ、丁寧に醸すこのお酒は、果実を使っていないのに、海外の方には「なぜこんなにフルーティなのか」と驚かれるほど香り高く、さらりとした味わい。洗練された味わいはまろやかでキレのよい口当たりで、酒の肴にはすっきりとした新鮮な白身魚がよく合います。

国内外で高い評価を受けるお酒が、この富士山の麓で醸されているという紛れもない事実。お酒好きの呑んべえのお父さんなら周知の事実かも知れませんが、私たちが共に暮らす富士山の確かな恵みのひとつです。そのありがたみを想いながら、お猪口を傾ける時間で、ちょっと涼しさを満喫してみてください。

取材・撮影協力 富士錦酒造株式会社

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和らぎ水のススメ

日本酒を飲む時には、「和らぎ水」を一緒に飲むと深酔いしないといわれています。お酒を飲む合い間に、お水を飲めば気分がすっきりとして深酔い、二日酔いを防げるそうです。和らぎ水に使うお水は、おいしい水であることが条件。蛇口をひねると、おいしい水が出てくる富士山周辺では水道水でも大丈夫。

「和らぎ水」はカラダに優しい飲み方。お水を飲むことでお酒のアルコール分がゆるやかになり、酔いの速度がゆっくりと穏やかになります。お水でひと呼吸置くので、お酒を口に含むタイミングもワンテンポゆっくりになります。ウイスキーなどの強めのお酒を飲むときにチェイサーと呼ばれるお水(またはソーダなど)を口直しに飲むことがありますが、日本酒にも和らぎ水というスタイルは、嗜みのある大人として覚えておいて損はないでしょう。

口の中をリフレッシュし、舌の感覚を鈍らせないという役割もあり、次のひと口や肴がより一層美味しく感じられます。この和らぎ水も仕込み水と一緒だとより気が利いていますよね。日本酒は深酔い、悪酔いをするというマイナスイメージがありますが、「百薬の長」といわれるように、ゆったりと愉しめば、心身のリラックス効果や美容の効果などもあらためて注目されています。日本酒を飲む時に、水のことをより理解していると、さらに美味しく感じることができるかもしれません。

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