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布

受け継がれる布愛

鍋敷に使われるシリコン製品や、バッグや財布に使われる革製品など。シリコンや革といった素材が流通していなかった時代、日本人はこれらを布で作り、布に囲まれて生活していました。子どもの服が破れたらお母さんが縫い直したり、切って雑巾にしたり。捨ててしまうのはもったいないからという一方で、布に対する「愛着」の心もあったのかもしれませんね。

現代では、継ぎ接ぎをして再利用するなんていう光景を目にすることは少なくなりましたが、布の質感にこだわって服を選んだり、染められた色の風合いにこだわって布を選んだりと、布への「愛着」は日本人の遺伝子の中に受け継がれているように感じます。

惹き込まれる布

特に、手織りで織られた布には、心がすーっと和むような優しさを感じることができます。

富士山の麓、富士宮の地で手織り機に腰を置く影山さんの布はまさにそれです。ひとつひとつの素材の特徴が活かされているため、どの布を手に取ってみても、布がいきいきとしているのが伝わってくるのです。

影山さんが手織り職人としてキャリアのスタートを切ったのは、実は学生時代。当時高校に通っていた影山さんは、家業の「影山工房」の仕事を学校帰りや休みの日に手伝っていたそうで、大学卒業後は手に職をつけるほうが自分には向いているということから、そのまま家業を継いだのだそうです。

しかし、当時織っていたのは紬の反物のみで、その需要もいずれは行き詰ってしまうということから、絹以外の素材に視野を広げ、日常生活の中で取り入れてもらえるものを作ることに力を注いでいったと言います。

今もそうらしいのですが、初めて扱う素材は染めたり織ったりしないと特徴が分からないため、最初はとにかく失敗したのだそうです。その失敗をもとに、素材を理解していくことが一番の近道だったそう。反対に、素材の特徴を活かせた時は、その良さをさらに追い求めていくそうです。「どうしたら素材が一番気持ちよく布になれるか」これを考えている時がとても楽しい時間なのだそう。

そういった素材への理解を全て自分の手で掴んできた影山さんだからこそ、つい手に取ってみたくなるような布を作り出せるのでしょう。

決して大きいとは言えない、住宅街の中にあるちいさな工房。しかし、だからこそお客さんからの要望に対して真摯に耳を傾け、丁寧な作業ができるのだと思います。

影山さんからは、布への妥協を許さない姿勢と情熱を沸々と感じました。まさに、日本の文化を支える職人そのものでした。

  1. 色の違う3つの綿を使った布。染料を使わず、自然の綿の色だから出来上がった風合いがとてもナチュラル。
  2. 蓮の糸で織られた布。織る前の蓮の糸はカサカサした手触りで「本当にこれが布になるの?」と言いたくなるほど弱々しいのですが、絹と合わせて織ることで他の糸では表現できない柔らかくて風合いのある布になるのです。
  3. 影山さんの工房には3台の織り機があります。どれも木製で出来たいかにも年季の入った道具なのですが、影山さんとの呼吸はピッタリ。影山さんの頼れる相棒です。
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