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和紙

取材協力/株式会社大直
SIWA | 紙和

大直から生まれた新しい形

山梨県のちいさな町から、世界中の人たちに愛される『和紙』が生まれました。シンプルでいてデザイン性があり、とても柔らかそうな質感の漂うバッグ。
  実は、紙で出来ているのです。
「現代の生活に合った和紙製品を作りたい」この情熱を形にしたのが、山梨県市川大門の地で和紙と向き合い続ける「株式会社大直(以下大直)」。

この熱い想いから生まれた紙のバッグは、大直の和紙ブランドである『紙和』シリーズのひとつ。『紙和』シリーズには、大直が開発した耐久性に優れ、水にも強い『ナオロン』という特殊な和紙が使われています。

このナオロンを通して和紙の魅力をたくさんの人に知ってもらいたいということから、現在世界的に活躍する山梨県出身の工業デザイナー深澤直人さんとタッグを組んで作られたのが『紙和』なのです。

この『紙和』の製作には、大直、深澤直人さんだけでなく、市川大門の『女房役』たちも含めた美しいほど純粋な情熱が込められていました。

紙和を支える熱き職人

ゴォー、ゴォーと轟音が響き渡る「とある紙工場」の中では、製紙機械によってものすごいスピードで次々に紙が仕上がっています。

生産効率の良い現代的な機械が並ぶ工場。その奥に、ひとつだけ創業当時から残され続けている古くて大きな製紙機械があるのです。人の手無しでは正確な仕事ができないし、紙を作るのにとにかく時間がかかるため効率が悪く、今この機械を使っている製紙工場は市川大門にはこの工場を除いて他にはないのだそうです。しかし『紙和』の生地となるナオロンは歳を重ねたこの機械から生まれるのです。それは、この機械でなければ出せない独特の風合いがあり、それが『紙和』の持つ「柔らかそうな質感」に繋がっているため。

この機械と同じく、歳を重ねた何とも人の良さそうな工場長は「全ての工程をとにかく正確に行わなければ、質の良い紙を仕上げることはできないんだ。経験と勘で機械の具合をその都度微調整してあげるんだよ。これが大切だね」と話してくれました。これまでに無かった新しい和紙ナオロンが、市川大門一古い機械と人情味のある人たちによって作られているということに、何だかむしょうに嬉しくなるのです。

そして、忘れてはならないのがこのナオロンという特殊な和紙を立体的な形へ縫う影の立役者「縫製職人」の方々。

「紙」を縫う。
それは、見た目以上に難しいのです。それが証拠に、大直はナオロンの縫製にあたっていくつも工場を訪ね、お願いをしてきたそうなのですが、高い技術が必要なことからことごとく断られたのだと言います。

そして行き着いた現在依頼をしている縫製所では、大直の「新しい物を生み出す熱い想い」に刺激を受け、承諾してくれたのだとか。
しかし、同縫製所でもこれまでに紙を縫うという経験が無かったため、最初は手探りの状態から始まったそうなのですが「できない」と言うことが嫌いな社長は、大直と一緒になって「この場合はこうした方が良いね」とか「ここはこういう指示をもらってるんだけど、こうしてみたらどう?」という風にお互いに相談しながら良い製品を作るためにどうしたら良いかということに対して強い協力関係が結ばれているのです。

綺麗な形に縫えるかを常に研究し続けている社長がいるからこそ、『紙和』は美しいフォルムを築けているのです。

世界中から愛される和紙

この市川大門の地で生まれ育っている『紙和』は現在、世界中のバイヤーが集まる“トレンドユニオンパリ”で展示されたり、“パリコレ”で使用されたりとワールドワイドな視野で広がりを見せています。「『紙和』を通して世界が繋がっていき、多くの人と知り合えたり、多くの経験をさせていただいていることを本当に嬉しく思います」と話してくれた『紙和』のチームリーダー。今より千年も昔、平安時代から和紙産業が盛んに行われてきた市川大門の地で、大直から芽吹いた新しい情熱が地元の関係企業にも浸透し、形となった『紙和』。使い込むほどに、シワが増え風合いが美しくなっていく。古くから日本に残され続けてきた和紙の魅力を改めて感じさせてくれる心が躍るプロダクトです。