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気鋭の農家対談

対談:農業を話そう。

富士の土地で19代にも渡り農家を続ける安藤さん。そして、富士宮市でイチゴ畑を経営しているれっどぱーるの佐野さん。
現在、安藤さんは30歳、佐野さんは37歳と、農業の世界では比較的若い2人ですが、2人とも固定概念に縛られず、新しい農業の形を見出して積極的な活動をしています。仕事でもプライベートでも仲が良いという2人に今の農業への想いを聞いてきました。

monoaru(以下m)

今日はよろしくお願いします。

安藤さん(以下A)

よろしくお願いします!

佐野さん

お願いします!

m

早速ですが、お2人とも代々農家の家に育ってきたんですよね。自分が農家を継ぐといつ頃決心したんですか?

A

b

A

小学校の頃から自分は長男だし継がなきゃいけないのかなって思ってましたね。周りからの期待感も感じてました。小学校低学年にして(笑)

S

それすごいよく分かる!周りからのプレッシャー半端じゃないよね。安藤君と同じで僕も早い段階でいずれは農家になるんだと覚悟してました。あと、自分の場合は大学の研修で農家さんのところに何日か泊まり込みで勉強させてもらってたんだけど、その時見せてもらった売上額に「すっげー」って思っちゃったんですよね。

A&m

(爆笑)

S

でも今考えたら甘すぎでした。というか、その時は知ってるようで何も分かってなかったし原価や管理費用なんて全く考えてなかったですから。

A

小さい頃から親父の手伝いはしてもお金のことなんて全く分からないですもんね。僕の場合は、佐野さんと少し違うんだけど、そういう金額的な魅力はあまり感じていなくて、どっちかっていうと機械の格好良さに惚れちゃったんですよね。保育園や小学校時代には、親父のひざの上に座って親父と一緒にトラクター乗ってたのが最高に気持ちよかったんですよ。でも今では親父と意見が合わなくてぶつかることも多いですけど。

S

確かにね。やるからには親父を超えなきゃって思うもんね!

A

そうなんですよ。

m

なるほど。親父さんの存在ですか。親父さんとのエピソードを聞かせてもらっても良いですか。

A

自分が大学卒業して農家になったばっかりの頃って親父の言うことをただひたすらやっていたような感じなんです。でも、自分が経験を重ねていくうちに、段々農業のことが分かってきて、それってもっとこうした方が良いじゃん!て思うようになるんですよ。そうすると、今までのやり方を否定された親父からすれば穏やかじゃいられないですよね。それでぶつかることもありました。その点佐野さんは親父さんとの関係性良いんじゃないですか?

S

気使ってるだよ。

A&m

(爆笑)

S

でもやっぱりそういう確執っていうのかな。やっぱりあったよ。でもお互いの良い所を認め合って前に進んでいる感じ。

m

とすると、2人とも農業をやっているうちに、今までのやり方ではダメだって思ったんですよね。それってどういう所なんでしょう。

S

うちはイチゴをやってるんだけど、今までは組織に属していたから、その中で決められた規格に縛られていたんですよ。組織の中では、味よりも形の良し悪しが大切だったからとにかく形にこだわっていました。でも野菜や果物の値段は毎年下がってしまって生活が大変でしたよ。

A

そうすると数をたくさん作るしかないんですよね。

S

そう!去年と同じ売上げを確保するには去年100個売っていたものを今年は150個売らなきゃいけない、みたいなね。農家の個性が無くなっていくと感じました。

m

どうやってその状況を打破したんですか?

S

実際に野菜や果物を食べるお客さんの声を聞いて、その声に対応していくことです。

A

今までは組織から出てくる注文を聞いていたんです。当時、僕らの野菜は直接消費者に届くんじゃなくて、2クッション置いて消費者に届いていたんですよ。

S

そうすると、僕ら生産者の想いがどんどん薄れてしまって、野菜がモノに近くなっていっちゃうんだよね。

A

はい。でも、今は数よりも質の時代。だからこそ、直接食べてもらえる消費者の声を聞いて、消費者の求めるものを作ることが大切だって気づいたんです。

m

直接聞く消費者の声はやっぱり新鮮でしたか。

A

考え方が180度変わりました。

S

本当にそうだよね。数を作るにはどうしたら良いか。じゃなくて美味しいものを作るにはどうしたら良いかになったよね。聞いた声に対して「じゃあこんなのはどう?」って僕らから提案もできるようになったし。

A

あとは消費者の方が一番野菜と接点のあるスーパーさんとの関係性も大事ですね。消費者の声は何より大切だけど、どうしても聞ける声に限りがあるんですよ。でも直接スーパーさんと繋がりを持つようになって、スーパーさんは消費者の気持ちをすごく良く分かってて僕たちにもたくさんアドバイスをくれるので助かります。

S

僕らの想いも受け取ってくれるよね。僕なんか、組織から抜けた後、愛情込めて作ったイチゴが全然売れなくて本当に生活が苦しい時期があったんだよ。その時、某スーパーさんにイチゴを抱えて飛び込みで営業に行ったんだよ。半分泣きながらね。

A

本当ですか!?

S

そう。そしたら僕の想いをしっかり聞いてくれたし、ちゃんとイチゴを評価してくれたんだよ。そしたらお店にも置いてもらえるようになって。あの時は本当に嬉しかった。

m

私たちの仕事もそうですけど新しいことにチャレンジしていくって本当にエネルギーを使いますよね。

S

でも楽しいですよね。毎年「今年こそは120%のイチゴを作る」と決めても必ずどこかでズレがでて完璧にはならないんです。

A

全てが完璧にいくって本当に無いですよね。

S

そうだね。だから、70歳とか80歳のじいちゃん、ばあちゃんも完璧を目指して今も頑張ってるんじゃないかな。

A

深いですね。でも佐野さんの言う通り、今は本当に充実していて楽しいです。明日もまた早くからがんばらないと。

S

あれっ!?もうこんな時間じゃん。

m

日付変わっちゃいましたね(笑)

A

そろそろ終わりにしましょうか。

m

そうですね。まだまだ話は尽きないですけど、明日も早いですし。また明日から頑張ってください。美味しい野菜をこれからも楽しみに待っています。ありがとうございました。

A&S

頑張ります!ありがとうございました。

気鋭の農家対談

取材協力/右)安藤農園 安藤徹哉さん 左)れっどぱーる 佐野真史さん